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  • ベルティングボイスとアンザッツの関係

    ボイストレーニングに関して割と深めに調べている方は「アンザッツ」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。

    アンザッツとは、フースラーという著名なボイストレーナーが編み出した、喉の筋肉のトレーニングメニューのことです。

    発声には40種類ほどの筋肉が関わっているとされていますが、それらの筋肉を満遍なく鍛えていくのが「アンザッツ」です。

    アンザッツをしないとベルティングボイスはできないの?

    ベルティングボイスは、アンザッツで喉の筋肉トレーニングをしないと出せないのでしょうか。

    結論は「半分ノー。半分イエス。」です。

    ベルティングボイスは発声に関わる筋肉が満遍なく発達していないと出せません。

    しかし、アンザッツをやらないと喉の筋力が鍛えられないのかというと、そうではありません。

    普通に歌っているだけでも、喉の筋力は鍛えられていきます。

    しかし、それだけではトレーニングされていく筋肉に偏りが出てしまうという大きな問題があります。

    自分の歌う曲の偏りや、自分の声の出し方の偏りによって、40種類の内の数種類だけが重点的にトレーニングされ、残りの筋肉はそれほど負荷がかかっていない、ということになりかねません。

    アンザッツは、その偏りを少なく筋力トレーニングができるという点に、最大のメリットがあります。

    アンザッツの中身

    アンザッツは、全部で7種類の発声メニューで構成されています。

    ・地声系の
    ・1番、2番、3a
    ・裏声系の
    ・3b、4番、5番、6番

    この7種類で構成されています。

    それぞれの番号で音質が指定されており、その音質を再現していくことで、喉の筋力を鍛えていくのが「アンザッツ」です。

    重要なアンザッツは男女で異なる

    日々ベルティングボイスのレッスンを行う中で、私が特に重要だと感じるのは、

    男性では4番と6番、

    女性では1番と2番です。

    重要なアンザッツ【男性編】

    男性は生来力が強いからなのか、とにかく地声を張り上げてしまいがちです。

    そのため、「声帯を薄くしていく」という感覚がそもそも無い場合が多く、「音程を上げる=パワーを上げる」だと思い込んでいる人も多いです。

    声帯が分厚いまま呼気の強さで音程を上げていく、いわゆる「張り上げ」では、地声の最高音は必ずG4辺りで止まります。

    G4より高い音を地声で出すには、

    ・「声帯を伸ばす感覚を覚えること」
    ・「その感覚を地声で再現できること」

    この2つは間違いなく必要です。

    そのために、まずは声帯伸展を鍛えるアンザッツである4番、6番が必要なのです。

    重要なアンザッツ【女性編】

    逆に女性は、地声を張り上げる人が少なく、「地声のまま耐える」という感覚がほとんどない場合が多いです。

    音程を上げると自動的に地声感が抜けてしまい、地声とも裏声ともつかない「ミックスボイス」的な音質になってしまうことで悩んでいたりします。

    だからアンザッツ1番、2番で音程が上げていくという練習が重要になるのです。

    裏声を練習する意味

    裏声系のアンザッツ4番、6番を練習することで、具体的にどのようにベルティングボイスに近づいていくのでしょうか。

    これは、裏声を発声する時の声帯の状態が深く関係しています。

    そもそも裏声で何が起きているのか

    私たちが裏声を出しているとき、喉頭では

    「輪状甲状筋」という筋肉がメインで稼働して、声帯が前後に引き伸ばされています。

    そして、それに伴って、声帯を厚く閉じる動作は反射的に抑制されています。

    この状態は非常に繊細で、声帯が薄く引き伸ばされているため、強い呼気圧には耐えられません。

    そのため、必然的に音量は控えめになります。

    逆に言えば、裏声で音量が上がらないのは、声帯が薄すぎて、息を受け止める抵抗力がないからです。

    この裏声特有の「抵抗力の無さ」が、裏声を練習する理由を知る上で最も重要なポイントです。

    裏声の音量アップが、声帯を閉じる筋肉を呼び起こす

    アンザッツ4番・6番は裏声で発声するアンザッツなので、当然音量は上げにくいです。

    しかし、練習ではなるべく大きい音量になるように発声していきます。

    本来、声帯を伸ばす筋肉が優位なまま、ボリュームを大きくするために無理やり息の圧力を上げると、声帯は耐えきれずにひっくり返るか、あるいは息漏れが激しくなるだけになります。

    しかし、ここで脳と喉が「もっと音量を出すために、声帯をしっかり閉じなきゃいけない」と学習し始めると、面白いことが起きます。

    脳が「声帯筋」という、地声・裏声両方に関与できる閉鎖筋に指令を出し、伸ばされた声帯の中に閉鎖力を少しずつ混ぜ込もうとするのです。

    この「声帯筋」が入れられるようになると、まず裏声の息漏れが減り、以前よりも安定感が出てきます。

    さらに「声帯筋」の稼働率を増やせるようになると、声帯が伸ばされている中により多くの閉鎖力を入れられるようになるので、「地声と裏声の行き来」をすることが可能になります。

    地声と裏声の行き来は、音程を上下させながら練習することが一般的ですが、声帯筋がしっかり稼働すれば、同じ音程の中でも地声と裏声を行き来できます。

    例えば、B4の高さの裏声を、音程を変えずにゆっくり地声にしていく、といった動作もできるようになるのです。

    この時の地声は、張り上げた地声とは違い、声帯を伸ばす動きがふんだんに含まれた地声なので、呼気圧を上げ過ぎる必要がなく、非常に楽な体感で出すことができます。

    この地声に、口の開きなどの要素を加えてよりパワフルな音質にしたものが「ベルティングボイス」です。

    つまり、裏声の音量アップに挑戦することは、声帯筋を目覚めさせ、裏声の中に閉鎖力を入れ込めるようになるための第一ステップなのです。

    地声を練習する意味

    地声を練習するということは、言い換えれば声帯や仮声帯などの、「喉にある閉鎖弁」を閉じる練習をするということです。

    これらの閉鎖弁は、閉じれば閉じるほど息の通り道が狭くなるので、やり過ぎると息が詰まってしまい、苦しくなってしまいます。

    しかし、逆に地声の練習が不足していると、「息の通り道を狭くする」という行為自体が苦手になっていくので、「息を吐く力を強くしても、息漏れが多くなるだけで声量が増さない」という症状に悩まされます。

    そのため、「声を張る」という感覚が薄い、もしくは苦手だという自覚のある人は、地声の練習が重要になります。

    アンザッツの練習方法

    アンザッツを練習する上で気をつけなければいけないのが「息の流れ」です。

    私たちの喉は、「声を出す」という動作以外にも「息を堪える」という動作を行うことができます。

    息を堪えるのか、堪えないのかで声の出し方は大きく変わるので、まずはそこを解説します。

    息を堪えるとは?

    まずはこちらをご覧ください。

    https://youtube.com/shorts/LZJ2iFAIBpA?si=22zgnbtY4K2YuoLz

    こちらは俳優の平泉成さんのモノマネ動画です。

    このモノマネをされている方は、「息を堪えて」声を出しています。

    どういうことなのか体感してもらうために、できる方は、動画のようにモノマネをしてみてください。

    モノマネをしながら、「あー」と2秒くらい伸ばしてみましょう。

    伸ばしたらロングトーンをやめて構わないのですが、やめる際に「はぁ〜」とため息をついて動作を終えてみてください。

    文字にすると

    「あーーーはぁ〜」

    という具合です。

    なるべく突然ため息に切り替えるのがコツです。

    すると、「はぁ〜」とため息をつく瞬間に、息の流れが一気に解放された感覚になりませんか?

    同時に、「はぁ〜」とため息をつく前、つまり「あー」と伸ばしている最中は、「息が詰まっていた」ことに気づくのではないでしょうか。

    これが「息を堪える」の正体です。

    この動作はよく声帯閉鎖と勘違いされますが、違います。

    現に平泉成さんのモノマネは、息は詰まっているのに声質はスカスカですよね。

    これは、「息は堪えているが、声帯には隙間が開いている」からです。

    「息を堪える」という動作は、声帯以外の仮声帯や、声の通り道である「声道」全体を使って行われているので、声帯に隙間が開いているかどうか関係が無いのです。

    アンザッツは基本的には息を堪えない

    息を堪える動作は行き過ぎると「詰まり」「苦しさ」「響きが篭る」といった症状を引き起こすので、歌の世界ではあまり良くないとされています。

    そのため、アンザッツも息を堪えないで行うのが基本です。

    まずは息を堪えていない状態を作り、そこに要素を付け加えてアンザッツの形にしていく、という順序を辿りましょう。

    息を堪えていない状態を作る方法

    息を堪えていない状態はリップロールなどの「SOVTトレーニング」といわれる練習で作ることができます。

    その中でオススメなのは「S子音にZを混ぜる方法」です。

    まず、S子音だけを「スー」と伸ばします。

    そこに、好きな音程で「ズー」と声を入れるだけです。

    多くの人は、「ズー」と声を入れると、最初に出していた「スー」という「息の音」が消えてしまいます。

    これは、「声を出す」という動作と一緒に、「息を堪える」という動作も連動して行われてしまった証拠です。

    まずは「スー」音が一切変わらないように、「ズー」を入れられるように練習しましょう。

    各アンザッツの方法

    S→Zの練習で息が流れている状態を作れたら、いよいよアンザッツの形にしていきます。

    アンザッツ1番は、地声で明るくコミカルな声質の「イ」を発声して喉仏を上げます。

    アンザッツ2番は、地声でオペラ歌手のような深くハッキリとした「ア」を発声して喉仏を下げます。

    アンザッツ4番は、裏声はミッキーマウスのような柔らかい音質を出します。

    アンザッツ6番は、4番の音質にオペラ歌手のような深みを加えて喉仏を下げます。

    これらを全て息を過剰に堪えることなく行います。

    詳しいやり方は動画講師をご覧ください。

    まとめ

    いかがでしたでしょうか。

    張り上げた地声とベルティングボイスとの違いは、「声帯を伸展する動作がしっかり入っているかどうか」です。

    そのためにまずはアンザッツを満遍なく行い、伸展された声帯の中に声帯筋を入れられるようななりましょう。

    詳しくは動画講義をご覧ください。

    それでは!

  • ベルティングボイスとは?

    ベルティングボイスとは一言で言うと、「発声負荷の少ない地声の高音」のことです。

    いわゆる地声張り上げは、発声負荷の大きい地声の高音を指します。

    発声負荷とは?

    声は、声帯が振動することによって生じます。

    そして、振動が開始するために必要な空気圧は人によって異なります。

    大きな空気圧でないと振動が開始しない人もいれば、少ない空気圧で振動が開始する人もいます。

    これを「閾値(いきち)」といって、楽に発声できている人ほど閾値が小さく、少ない空気圧で声帯が振動を開始するという実験結果が出ています。

    反対に閾値が大きいと、発声に毎回大きな空気圧が必要になります。

    大きな空気圧を生むためには、腹筋などを使って息を吐こうとしなければいけません。

    この「吐こう」という無意識の動作を感じ取った脳は、「強い空気が来るぞ!」という信号を声帯などの各種発声器官に送ります。

    すると、強い空気圧に耐えるため声帯は分厚くなり、息を堰き止める「仮声帯(カセイタイ)」も強く働き、空気圧を一生懸命受け止めようとします。

    このような一連の動作によって、空気圧は喉の辺りで受け止められ、その負荷がダイレクトに喉にかかります。

    これがいわゆる「喉締め」という状態であり、発声負荷が大きいという状態です。

    閾値を小さくする方法

    閾値が大きい人は、強い空気圧を受けないと声帯が振動しないように、脳がプログラムを組んでしまっています。

    そのため、仮に適切と思われる空気圧を一時的に当てても、素直に振動を開始してくれません。

    閾値を小さくするには、S→Zなどの「適切な空気圧の中で声を出す動作」を何回も練習し、体に覚えさせるしかありません。

    ベルティングボイスの体感

    閾値を小さくすることができると、発声の体感そのものが軽くなります。

    それまで口の先から喉まで広い範囲を使って声を出している感覚だったものが、「上顎の辺りだけを使って声を出している」という感覚になるので、発声自体がコンパクトになったように感じます。

    これは個人差はなく、必ず上顎の辺りに感覚が集中します。

    今までたくさんの生徒さんをレッスンしてきましたが、発声負荷が少なく発声できている時の体感に関して、意見が割れたことは一度もありません。

    この軽くコンパクトな体感の地声のまま、音程を上げていったものが「ベルティングボイス」です。

    ベルティングボイスを身につけたい方へ

    今回は、ベルティングボイスの仕組みや、地声の張り上げとの違いについて解説しました。

    文章だけでは伝わりにくい「声の違い」「練習方法」は、動画講義で実際の音声を交えながら詳しく解説しています。

    ベルティングボイスの感覚を実際の声で確認したい方は、ぜひ動画講義もご覧ください!

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